2021年度 年次報告(2021年4月1日~2022年3月31日)

2021年度 年次報告 
「はじめに」より

 アドボカシーという言葉を耳にしてからすでに数年が過ぎ去っています。そしてその言葉はずーと私の心に引っ掛かり続け、少しずつ関心がそして思いが醸成してきていたのでしょう「今!」という風が年次報告の作成にあたって耳許でささやき始め、囀になっていきました。
 勿論チャイルドヘルプラインMIEネットワークは当然の使命として、チャイルドラインやほっとダイヤルに入る子どもたちの声を例年年次報告というかたちにして、社会へ発信し続けています。
作成に当たっては、チャイルドラインやほっとダイヤルに入る電話やチャット、そしてメールなどのすべての記録を基に、編集会議で広げたり深めたりと話し合いを重ね柱立てをし、文章化されていきます。しかし、文章化の時点で背景や状況に重きが置かれすぎてはいないだろうか…という疑問がふつふつと強まってきていたのです。アドボカシーという言葉を受け取りその意味を心の中で醸成させていくプロセスが、私をそんな思いに導いていったのかもしれません。そしてもう少しストレートに子どもの声を年次報告に反映できないだろうか-と。
 方向は会議に提案され決定をみます。しかし方法論はその時「未だ闇の中」状態でした。目指す方向に一歩前進させるということは? アドボカシーという言葉の意味することを、どんな方法を以って具現化したらいいのか…。編集会議は手さぐり状態で始まっていきます。
その編集会議でファシリテートを勤める私と同時進行で、参加者の発言を白板で分類しながら専務理事の竹村がファシリをしています。2回目の会議のときでした。その手許に目をやったとき、今年は条文で整理がされていたのです。「これだ!」と具体的方法の即決です。

 アドボカシーをチャイルドラインやほっとダイヤルの現場で、どんな手立てをもって実現できるか考えてみたくなりました。最前線にいる受け手だからこそ、その受け手が理念を理解し努力して実力をつけることで、必ず実現するに違いないという思いがあります。但しそのためにはリーダーが、先ず事を理解して意欲的に取り組む姿勢を必要とします。

 傾聴を第一義としながらも、相談活動に携さわったことのある人なら誰でもが学ぶ「リピート」という言葉。その意味するところをアドボカシーに取り組む上でもう一度考えてみたいと思うのです。子どもたちにとって自分の発した言葉を他者を通して受け取るのは、自己の客観視につながっていくことになると思っています。但しこのとき受け手が意訳をしないことが絶対的な条件になります。非常に難しいことですが子どもの云った言葉をそのまま、つまりその通りに、しかも記憶して言葉をなぞるのではなくしっかり自分の中で受け止めて(この作業が重要です)「こう云ったんですね」と戻す、ということです。このことをオオム返しという表現で論ずることもありますが、これは鳥のオオムの様に意味なく言葉を真似ないことを本来は意味していると、私は考えています。子どもの側からすれば戻されることで意識化され、自分の発した言葉が自分の気持をどこまで表現できていたか、自分をみていく作業になります。それは不足を自ら補う力をつけることにつながるかもしれません。例えば語彙を増すことなどに。又表現力の問題を自分に問うことになるかもしれないのです。
気持を言語化できることは、人間にとって重要な課題ですが自分だけでは難しい問題でもあるのです。そこに他者(受け手)が存在することで、その受け手との関係性で可能たらしむと考えられます。大人になると自意識が肥大して難しくなりますが、子ども時代の柔軟さをもってすれば受け手の力量次第で可能性大と思っているのです。更に付け加えるなら、いいえこれこそが本題と云いたいところですが、子どもと対等に対話する力量を受け手が持てるなら、子どもの表現力が引き出されて豊かな会話が成立するにちがいないと、それこそが望ましい姿だと思っているのです。それが出来てチャイルドラインがそしてこどもほっとダイヤルが、意見形成支援の現場になれてると思っています。但し理論的には成立しても、現時点で私たちにその力のないことが心から口惜しいです。にも拘わらず未練たらしく、どうすることで可能たらしむか探っている私がいます。

電話やメールから聴こえてくる
子どもの声

2021年度の年次報告書作成にあたっては、子どもアドボカシーの視点で子どもたちの声をどう発信するのか話し合い、「子どもの権利」を柱にしてまとめました。

第3条子どもの最善の利益
 大人のよかれの中で自分のことが決められることに違和感や矛盾を感じると、子どもは悩みが大きくなります。自分の存在感が希薄になり、自らを信じる力も揺らぎます。子どもが判断するための情報を共有すれば、子ども自身が自分で決めることで責任が持てることになると思います。
第6条生きる権利・育つ権利
 子どもが自分の生命を懸命に伸ばそうとするときに、周りの大人や子どもからそれを妨害されることは、どんなにか苦しいことでしょう。
平和な日本で10代の若者の自殺率が高いのは、このように多くの子どもが様々な生命の危機にさらされていることに原因があると感じます。
第12条意見を表す権利・意見を聴かれる権利
 子どもたちが意見(=気持ち・感情・意志)を表明するには、充分に聴いてもらえる環境があることが大事です。電話やメールの中で、かけてきてくれた子どもたちとやりとりする中で、自分の気持ちに気づいたり、気持ちがはっきりすることにつながります。
第13・17条表現の自由・権利を知る
 子どもは、自由な方法でいろいろな情報や考えを伝える権利、知る権利を持っています。子どもは小さな時から様々な形での表現が保障されることで、ありのままの自分でOKと思うことができます。
第16条プライバシー・名誉は守られる
 自己確立ができず、人との人との境界線があいまいな子どもたちは、いじられていてもいじめとわからず、不快な思いを自分の中に押し込めることで関係性を保とうとします。しかし、すでに関係性不全であるため、プライバシーを侵害しても、侵害されてもわからないのだと思います。だからこそ、自分らしく生きる権利を守るには、プライバシー・名誉が守られなければならないのです。
第19条虐待・放任からの保護
 子どもは生まれただけでは育つことができません。第一義として親や養育者が子どもを養育することで人間として成長します。子どもが健やかに育ち、自分の人生を生きるために、家庭、地域、国はすべての子どもを守り、養育する責任があります。
第28・29条教育を受ける権利・教育の目的
 子どもたちの学びの場は学校が主になり、地域や家庭の子どもを育てる力は衰える一方です。そのことは子どもたちが主体的に取り組んだり体験を通して学ぶ機会を減少させ、知識を自分のものにできていないように感じます。周りの大人のこだわりや期待に沿うために、子どもたちはそもそも、学びたいことを学べていないのかもしれません。
第31条休息・余暇・遊び・文化的、芸術的生活への参加の権利
 第31条は生きる喜びや思想を培う上で欠かせないのですが、その権利侵害を直接訴える電話は無いのは、この権利を享受することの意味を知らされていないからではないかと思われます。その結果、身体は生きていても、精神的な死、心の死ともいえる状態となっているのではないかと思います。

2021年度子どもの声を受け止める

~子ども専用電話「チャイルドラインMIE」・「こどもほっとダイヤル」の
電話データからみえる子どもの状況~

チャイルドラインMIEの報告

チャイルドラインは、全国67の団体がネットワークを組み実施している子ども専用電話です。三重県では毎日実施できていませんが、実施のない時間は開設している全国のチャイルドラインで受けてもらっています。2021年度全国のチャイルドラインで受けた三重県発信の電話は1,732件ありました。
※使用データは、チャイルドライン支援センターのデータベース(2022年3月31日までに入力完了データ)を使用しています。

チャイルドラインでは、安心して話せる電話かどうか、無言や一言の電話が続いて、やっと話し始める子どももいます。
名前や年齢・性別など受け手から聞くことはありません。会話が成立した731件をデータ化しています。

こどもほっとダイヤルの報告

 三重県では、三重県子ども条例に基づき、子ども専用電話相談『こどもほっとダイヤル』を開設しました。子どもの声を受け止め、子どもとともに状況や気持ちを整理しながら子ども主体の解決方法を考えます。専門的な対応が必要な場合は関係機関につなぐことができます。
2021年度は1,026件の電話を受け、児童相談センターに2件、教育委員会に1件繋ぎました。

【関係機関】県子ども・福祉部少子化対策課、同子ども虐待対策・里親制度推進監、県児童相談センター児童相談強化支援室、県教育委員会事務局子ども安全対策監、同生徒指導課、同研修企画・支援課(総合教育センター)、県環境生活部私学課、県警察本部生活安全部少年課、県女性相談所、チャイルドヘルプラインMIE ネットワーク