2025年度 年次報告(2025年4月1日~2026年3月31日)

2025年度 年次報告 
「はじめに」より

 「愛着」という言葉に出会うきっかけを私にくれたのは、チャイルドラインに電話をしてきた子どもたちでした。かれこれ30年近くになるでしょうか・・・。当時は支え手という立場で、現場に私も何度か入っていたのです。そんなとき、殆ど同じような内容の話なのに「大丈夫!」と思える場合と、「待って!待って!」と糸の切れた凧のように手を伸ばして掴みたい思いに駆られる子どもがいることに気付かされ、「なぜ?」と生じた疑問を出発点にしています。
 その頃、執着ともよばれる愛着は専門家の間ではとも角として、一般的にはそれほど、馴染みのある言葉ではなかったと記憶しています。
従って本屋に行っても関係する本は殆んどなく知り合いから借りたり、米国へ留学した人の話をききに行ったりと、乏しい学びを基に私なりに浮き彫りにした愛着像は、自己の中に安全基地が確保されるということでした。それは戦前生まれの私にとって、航空母艦のイメージと重なったのです。そして長女を出産して病院から実家に戻ったときの母の一言「三つ児の魂百までだからね」という言葉とも。
チャットでも電話でもそしてメールでも感じるのです。伝達手段は異なれど、きれ易い子どもが増えていることを。なぜか・・・又疑問が生じます。子どもたちはいっぱいの自己否定感を抱えています。従って不安感を。その先には希死念慮もあるのでは、と思っています。当然のことながら子どもたちは、社会的背景である競争に晒され続けています。それも大きな一因になることは否めないでしょう。しかし生きるということは、多かれ少なかれストレスに晒され続けることでもあると考えたとき、それに太刀打ちできるに必要な「内なる力」パワーが必要で、そのパワーの弱体化を感じてしまうのです。つまり日本の子どもたちはかなり以前からひ弱になってしまった。そんな図式が成り立っていると私たちは感じています。そして浮かび上がってくるのが崩壊に近い家庭の問題。家族の関係性の変化とそこを取り巻くコミュニティの状況。背景に横たわる社会問題を避けての子どもの育ちは不可能だということを、年次報告書の場を借りて、私たちは問題提起をしているのです。鱓(ごまめ)は鱓なりの歯軋りをもって。
 生身の他者を感じる電話は子どもたちにとって今やハードルの高い存在。子どもたちの伝達手段はメールやチャットが中心になってきています。生身を感じる他者に向き合う不安感。そんな子どもたちに寄り添う受け手という存在。相手を知る(理解)ためには、先ず己を知る(理解)こと。自分とはいったい何者?自分のこの考え方そして感じ方は何によって形成されてきたの?辿った先には自分の原点である愛着問題が横たわっている・・・。
 「愛着」それは執着とも云われる生後1才半くらいまでの養育者との関係性。それが母であっても父であっても、或いは祖父母であっても、当然血のつながりのない他者(たにん)であったにしても無関係。要は中心になって自分の要求に応えてくれる人との関係性。限定された一人の人間との執着関係の成立によって満たされる安心感。満足感。自己の中に確立される安全基地。私はここにいることをOKされている。I am OK -。それの積み重ねは長じたときYou are OKできる人格に。更に云うなら執着関係を成立させている大人の囲りに、多様な人たちの存在があれば最高!です。なぜなら 子どもは「人」になっていくために、多様な人垣を必要とするからです。
 愛着という言葉から「可愛がる」「可愛がられる」関係性を連想する方がいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。この愛着という言葉には子どもの権利の原点である「子ども主体」の思想が息づいていると私は考えています。可愛がる―その行為はかかわる大人を主体にしています。赤ちゃんは可愛がられるという受身の存在になってしまいます。従って客体に。主体は赤ちゃんにあるということ。これこそが大事なのです。つまり赤ちゃんが今、何を欲しているか―。その赤ちゃんの気持、いうなれば欲求、それらを察知して応えて、初めて愛着は成立する行為なのです。お腹が空いて泣いているのにオムツを替えてもらっても、赤ちゃんが欲している気持を満すことにはならないのです。そうなんです!愛着とは、赤ちゃん(子ども)主体の権化に他ならないと、私は考えています。
 善し悪しの問題ではなく愛着には様々なスタイルがあることを共有したいと思い、岡田尊司さんの著書から引用させていただいたのが裏面の図になります。 同じ言葉でも受け取り方はそれぞれ。子どもたちと受け手の関係も同様であるが故に、己を知ることは子どもを受け止める力量につながっていくと信じて自分に向い合う。原点かもしれません。

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2025年度子どもの声を受け止める

~子ども専用電話「チャイルドラインMIE」・「こどもほっとダイヤル」の
電話データからみえる子どもの状況~

チャイルドラインMIEの報告

 チャイルドライン(全国統一番号フリーダイヤル)は、41都道府県70団体がネットワークを組み実施している子ども専用電話です。三重県では毎日実施できていませんが、実施のない時間は開設している全国のチャイルドラインで受けてもらっています。2025年度全国のチャイルドラインで受けた三重県発信の電話は423件でした。
※使用データは、チャイルドライン支援センターのデータベース(2026年3月31日までに入力完了データ)を使用しています。

チャイルドラインでは、安心して話せる電話かどうか、無言や一言の電話が続いて、やっと話し始める子どももいます。
名前や年齢・性別など受け手から聞くことはありません。会話が成立した160件をデータ化しています。

こどもほっとダイヤルの報告

 三重県では、三重県子ども条例に基づき、子ども専用電話相談『こどもほっとダイヤル』を開設しています。子どもの声を受け止め、子どもとともに状況や気持ちを整理しながら子ども主体の解決方法を考えます。専門的な対応が必要な場合は関係機関につなぐことができます。2025年8月からはLINE相談も始めました。
2025年度はこどもほっとダイヤル231件、LINE254件を受信し、児童相談所に9件繋げました

【関係機関】県子ども・福祉部少子化対策課、児童相談支援課、三重県中央児童相談所一時保護調整室、県教育委員会事務局子ども安全対策監、同生徒指導課、同研修企画・支援課(総合教育センター)、県環境生活部私学課、県警察本部生活安全部少年課、県女性相談支援センター、チャイルドヘルプラインMIE ネットワーク