MIEちゃんの手紙を見る

家族

進路のこと

私は高3女子なのですが、

親に進学したいと伝えたら女の子は進学する必要ない。

〇〇が男やったら進学考えとったって言われました。

これは男女差別に当たりますか?

MIEちゃんより

メールを送ってくれてありがとう。高校3年生の進路ともなると、学校では先生やクラスの人の話を耳にすることも多くなり、親と意見が衝突すると余計に焦る気持ちがあるのではないですか。

自分自身の生き方を方向づける進路のことを考えるのは、とても悩ましいことだと思います。ましてや、「男やったら進学を考えていた」という、養育者の進学を否定する言葉に憤りを感じているのではないかと思います。また、男女差別ではないかと思う気持ちの中に、不安や悲しみ、怒りがあるのではないかとも感じました。あなたが進学を希望しているは、何か興味のあることや、やってみたいこと、まだまだ学びながら考えたいなど、色々な思いがあったのに出せなかったのではないかと思っています。

 

私自身も高校受験の事で親の考えと違っていました。小さい頃から父親が理不尽に怒ることが何より怖くて、金銭などの家庭の事情が脳裏に浮かび、否定できずに決めたのです。先生や友だち、身内にも打ち明けられず、一人で抱え込み不安な気持ちを出せず、自分の本当にやりたいことすら考えるのをやめ、父親の言う通りにしました。当時は、怒りというより悲しみが強かったのですが、今でも、父親の支配に対して怒りがわいてきます。その怒りをぶつけられないまま、父親は亡くなっているので、今も怒りがわいてくるのかもしれません。子どもにとっての家庭環境は子どものせいではありません。当たり前のこととして育つ家庭の事は、家族以外の人には理解してもらいにくいと思いがちです。でも、人に話して聴いてもらうだけで、気持が軽くなったり、新しい考えが出てきたりなることがあります。気持ちが晴れた分だけ可能性を感じることが出来ます。今は自分の傾向として、「助けて」が言えない人間だと自分で分かっていて、一人で抱え込むことを防ぐのが大切だと感じています。自分の生き方を否定したくないと思っている自分がいるので、どんな選択をしても、決めたのは自分だと引き取れるようになったつもりでいましたが、それでもあの時、親に話していたらどうなっていただろうと、悔いが残っています。だからでしょうか、自分はできなかったのにあなたには、親に自分の気持が出せるといいと思うのです。あなたの人生です。じっくり考えて欲しいです。

チャイルドラインやほっとダイヤルは電話で話が出来ます。又、オンライン相談もあります。誰かと話すことで自分の気持に気づいたり、考えが整理出来たりもします。

 

あなたが言うように、男が進学、女は就職という考えは男女差別に当たります。女性差別は、女性であることを理由に不当な扱いを受けたり、差別を受けたりすることを言います。あなたの親が言ったように、私たちの周りでも、今も尚、男は仕事、女は家庭といった考えがあり、家事や育児は女性の仕事であるといった考えを持つ人も多く、女性に対する差別や偏見があります。人々の価値観、伝統、慣習などによって無意識のうちに規定されている事が多く、社会や会社などの組織でもこのような考え方の影響を受けているようです。【内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査】でも、共働き家庭であっても妻は家事、育児、介護にかかる時間が一日で4時間以上があるのに、夫はわずか30分しか家事や育児に関わっていません。また、女性の就業についても厚生労働省の調査では、子どもを産む前は70%であるのに、女性が出産半年後に仕事を続けている割合は30パーセント程度にとどまっているそうです。この他、

※男女平等世界ランキング2021…156ヶ国中120位、先進国では最下位。

※各分野における男女の地位の平等感 (男性が優遇されていると答えた割合)

1位 政治(73.5%)・2位 社会通念、慣習、しきたり(70.4%)・3位 職場(56.6%)

4位法律、制度(45.2%)・5位家庭生活(43.3%)・6位 自治会。PTAなどの地域活動(33.5%)7位学校教育(16%)

という結果も出ており、日本は、世界の中でも男女格差が大きい国で、またいろんな分野で男性の方が優遇されていると感じていることがわかります。10年連続で1位のアイスランドでは、政界や経済界に女性を多く参画させている所にあると言われています。

※世界経済フォーラム(WEF)「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2021」より

 

男性が優位で、女性が劣るということはありません。

今、理想としては、男女が公平に活躍できる社会が築かれようとしています。でも、実態はあなたが感じている通りです。そんな中で古い慣習や、性による差別によって不公平になり、教育をはじめとして様々な機会を奪われてしまうのは、経済や社会の発展の妨げになると思うのです。

差別のない社会の実現に、私たちも努力していきます。

 

・基本的人権・・・「人が生まれながらに持っている人間としての権利」で、人間が「かけがえのない個人として尊重され、平等にあつかわれ、自らの意思に従って自由に生きる」ために必要不可欠な権利であると記されています。(中学校の公民の教科書『新編新しい社会 公民』)

 

・子どもの権利条約 第2条(差別の禁止)

すべての子どもたちは、みんな平等にこの条約にある権利をもっています。子どもは、国のちがいや、どんな宗教を信じているか、そんな意見をもっているか、心やからだに障害があるかないか、おかねもちであるかないか、などによって差別されません。

子どもの権利条約 第3条 (子どもにもっともよいことを)

子どもに関係のあることを行うときには、子どもにもっともよいことは何かを第一に考えなければなりません。

・子どもの権利条約 第6条(生きる権利・育つ権利)

すべての子どもは、生きる権利・育つ権利をもっています。

・子どもの権利条約 第12条(意見を表す権利)子どもは、自分に関係のあることについて自由に自分の意見を表す権利をもっています。その意見は、こども発達に応じて、じゅうぶん考慮されなければなりません。

・子どもの権利条約 28条(教育を受ける権利)

子どもには教育を受ける権利があります。国は、すべての子どもが小学校に行けるようにしなければなりません。さらに上の学校に進みたいときには、みんなそのチャンスが与えられなければなりません。学校のきまりは、人はだれでも人間として大切にされるという考え方からはずれるものであってはなりません。

・子どもの権利条約 29条(教育の目的)

教育は、子どもが自分のもっているよいところをどんどんのばしていくためのものです。教育によって、子どもが自分も他の人もみんな同じように大切にされるということや、みんなとなかよくすること、みんなの生きている地球の大切さなどを学べるようにしなければなりません。